2016年11月:【ヒートショック】

みなさんこんにちは、渡邉です。

 このところ少し寒くなってきました。そろそろ住まいについても冬の支度を整えていただきたいと思います。東京都健康長寿医療センターが行った調査では2011年の1年間に全国で約17,000人もの人たちがヒートショックに関連した「入浴中急死」に至ったと推計しました。

 そのうち、高齢者が14,000人と大多数を占めています。今月号の「ひげ日記」では本格的に寒くなるまえにヒートショックを起こさない方法を皆様にお知らせ致します。

 ヒ-トショックとは、急激な温度変化により体が受ける影響のことです。暖房の効いた居間から出て、寒い脱衣室で服を脱ぎ、熱いお湯に入るときに起こる血圧の乱高下や脈拍の急激な変化が原因で、脳出血や脳梗塞等のヒートショックを起こしてしまうのです。

 ヒ-トショック対策として最も有効なのは、暖房して暖かなリビングと、廊下や脱衣室、トイレ等の温度差を小さくすることです。新築の住宅ならともかく既存の住宅で家全体を暖かくするなど、そう簡単にはできません。そこで、現在の住まいでできる工夫などを中心にご紹介させていただきたいと思います。

①シャワ-給湯
浴槽へのお湯はりを浴槽の蛇口をひねって行っている方にお勧めの方法です。浴槽にお湯をはるときに蛇口からお湯を出すのでは無く、シャワ-を使ってお湯を張るのです。シャワ-を使ってお湯を張ると効率よく浴室温度を上昇させる事ができます。東京ガスの調べではこのシャワ-給湯により浴室温度は15分間に約10度上昇させることができるそうです。

②浴槽の蓋を開けておく
ボイラ-やエコキュート等の自動お湯はり機能を使って浴槽にお湯をためている方は、冬の間は浴槽の蓋を開けてお湯を張って下さい。これだけでも浴室の温度は上昇します。

③洗い場にスノコ
昔からある方法ですが、この方法も効果的です。

④お湯の温度を低めに設定
浴室での事故は入浴温度41度を境にして死亡者数の増加がみられるそうです。浴槽のお湯の温度を38度から40度のぬるめにすることも効果的です。

⑤一番風呂を避ける
高齢者や血圧の高い人は家族が入浴した後の二番湯に入れば、浴室も暖まっていますから、ヒートショックを起こしにくくなります。

⑥入浴方法の工夫
「半身浴」や「かけ湯」など入浴方法を工夫しましょう。これらの方法は心臓や肺を水圧の負担からも守るので、高齢者や血圧の高い人にはお勧めです。

⑦その他の工夫
・気温が高い明るい内にお風呂に入る。
・空腹時や食後すぐにはお風呂に入らない(食後は一時的に血圧が下がるので要注意です)
・入浴中の心筋梗塞や脳梗塞の予防のために入浴前に水分を補給する

 ヒートショックを起こしやすいのは浴室・脱衣室・トイレと言われています。浴室への工夫だけでなく、脱衣室やトイレに暖房器具を設置するのも効果的です。

①浴室や脱衣室のサッシの内側に樹脂製内窓などを取り付ける。

②浴室に暖房器具を取り付けて浴室を暖房するというのがヒ-トショックの予防には一番効果的です。既存の浴室に後付け可能な浴室用暖房機などもあります。

③トイレや脱衣室・浴室のリフォ-ム時は機器の更新だけでなく床や壁の断熱改修にも目を向けてください。

 新築をお考えの方は、高気密・高断熱の家にすることです。高気密・高断熱の家はヒ-トショックの予防だけでなく、低体温症の危険も回避できます。真冬でも布団の中は暖かいので寒い部屋ででも眠る事はできますが、こんなとき肺に入る空気は冷たいままです。

 直腸温度が35℃以下にまでさがると低体温症になり、心臓発作や腎機能、肝機能障害が起こりやすくなり死に至ることもあります。寝室が寒いことが原因で低体温症の危険にさらされているとしたら、とても恐ろしいことです。

 ヒ-トショックが原因で亡くなる方の数は交通事故での死者数より多いと言われています。また、高齢者が自宅で亡くなる原因の4分の1はヒ-ショックだともいわれているのです。寒さを我慢するのは美徳などではありません。寒くなったら体のために暖房するのは決して贅沢なことではないのです。寒い日は我慢せず脱衣室などを暖房してください。

新築をお考えの方はもちろん、トイレや浴室、脱衣室のリフォ-ム相談などもお気軽に弊社までお問い合わせ下さい。

それではまた来月お会いしましょう

㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏