2010年9月:【既存住宅の省エネ改修ガイドライン】
こんにちは、渡辺です。9月になっても暑い日が続いています。皆さん体調はいかがですか?私は少し現場に行っただけで体中汗だくになり、かなりまいっています。先日テレビでアナウンサ-が、「今年の9月は残暑ではなく真夏だと思ったほうが良い。」と言っていました。
まだまだ暑い日が続くようです。皆さんも熱中症などにならぬよう、こまめに水分補給をしてください。特に現場で頑張ってくれている職人の皆さんには注意していただきたいと思います。
先月号の『ひげ日記』でも書かせていただいた通り、日本では二酸化炭素排出量を2020年までに1990年比25%削減を掲げています。しかし住宅分野における二酸化炭素排出量は増加の一途をたどっています。こうした状況を背景にして新築住宅に関しては、省エネルギ-法が順次強化され、多彩な省エネ手法が提案・実用化されてきました。
その一方、約4,700万戸と言われる既存住宅のうち、70%の約3,290戸は平成4年以前に建てられた断熱レベルの低い住宅であると考えられています。この既存住宅の省エネ化を行わないと目標の25%削減は難しいのが現状です。住宅で使うエネルギ-の内、消費量の最も多いものは暖房で、家全体で使うエネルギ-の約29%を使っています。
続いて消費量の多いものが給湯で約27%。ちなみに冷房のエネルギ-消費量は意外と少なく2%程度です。既存住宅の省エネ化を進めるためにはエネルギ-消費量のおおよそ60%を占めるこの暖冷房と給湯エネルギ-を削減することが重要となります。
そのためには、
1.熱を大切にする→住宅外皮の熱性能を向上させる
高断熱、日射遮蔽、通風
2.熱を上手につくる→設備機器(給湯や暖冷房設備)の効率向上
高効率給湯器、ヒ-トポンプの活用 (エコキュ-ト、高効率エアコン等)
3.自然エネルギ-の活用 太陽光発電、太陽熱温水器等
上記の内、高断熱とヒ-トポンプの活用をするだけで、築10~20年の住宅の場合、家全体のエネルギ-消費量を40%削減できるという試算があります。光熱費に換算すると年間51,000円程度の削減となるようです。断熱リフォ-ムは、省エネ効果を高めるだけでなく、室内の温熱環境の改善にも大きな効果を発揮し、居住性を高めることにもつながります。
しかし、こうした温熱環境の質的な改善効果は、光熱費削減のように数値で明確に提示しにくいのが実情です。そのため既存住宅の断熱リフォ-ムはなかなか進んでいません。私も数年前に自宅を断熱リフォ-ムし、その快適性の向上も十分体感し、皆さんにも是非お勧めしたいと考えていました。しかしそのための資料やデ-タも少なく、大変困っていました。
そんな時に、国土交通省監修による『既存住宅の省エネ改修ガイドライン』を用いた、『既存住宅の省エネルギ-改修講師養成講習会』があるというので参加してきました。講師養成講習会ということで、ガイドラインだけでなくその根拠となった実証実験の内容やいろいろな報告書等のデ-タも合わせて入手することができました。それらは根拠も明確でとても素晴らしい資料です。
今後はこのガイドライン等を元にお客様にもわかりやすい形で省エネリフォ-ムを提案させていただけると思います。
新築では比較的簡単な断熱・気密工事もリフォ-ムの場合は更に多くの知識を必要とします。新築で高気密・高断熱の経験も少なく、基本を理解していない工務店が断熱リフォ-ムを行うと、壁体内結露等を起こし住宅の寿命を短くすることにもなりかねません。しかし、正しい知識と技術を持った施工者が断熱リフォームを行えば夏も冬もとても快適な室内環境になります。
この断熱リフォームは家全体ばかりでなく、LDKや寝室などの部分リフォ-ムでも可能です。リフォ-ムをお考えの皆さんは、断熱リフォ-ムについてもあわせて検討することをお勧めします。光熱費の削減分だけで工事代金の元を取ることは難しいと思いますが、その快適性の向上はそれ以上の価値があると思います。
㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏