2022年7月:【『節電要請』】

皆さんこんにちは、渡邉です。

静岡県でも6月27日と早い時期に梅雨も明け、本格的な夏の到来です。連日、全国各地で35度を超える猛暑日の続く中、経産省からは電力需要ひっ迫注意報が発表されました。以前より政府は今年の夏と冬には7年ぶり全国に節電要請を行うことを決定していました。特に冬は夏より厳しいエネルギー規制が行われる可能性が高いそうです。

■節電要請の背景

・老朽火力発電所の休廃止

電力自由化や脱炭素、コスト構造の見直しなどを背景として火力発電所の休廃止は増加傾向にあります。2016年からの5年間で、毎年200~400万kw程度の火力発電が廃止となっています。

・今年3月の福島県沖地震の影響

この地震の影響で、福島県・原町火力発電所や仙台火力発電所など近隣の火力発電所が被害を受けたことも影響しています。

・社会経済構造の変化

家庭用電力需要が、コロナ前と比べて世帯当たり約150kwh(約4%)増加しました。

・ウクライナ情勢

 ロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー供給が国際的に不安定化しています。 日本は石油・天然ガス・石炭ともロシアへの依存度は低いものの、そもそも一次エネルギー自給率が低いため、国際的な不安定化の影響を受けやすい状況となっています。

■電力不足対策

 2011年の東日本大震災以降、日本は断続的な電力不足が起こってきました。2015年に、電力広域的運営推進機関が設立されました。これは東日本と西日本の周波数の違いによって電力を融通できなかった教訓から、全国規模での電力融通を可能とする司令塔として生まれた組織です。

これにより、2015年からは、電気の余剰があるエリアから不足するエリアへの電力融通が可能となりました。しかし、送電網の量が十分とは言えず、抜本的な解決とはなっていません。また、石炭よりも二酸化炭素排出量が少ないという理由で近年は世界的に液化天然ガス(LNG)の重要が増大していますが、ロシアによる供給減や中国による輸入の拡大等で、その調達コストは高騰しています。

また日本では、福島第一原発の事故によって反原発への動きが強いことも、問題を複雑にしています。現在、日本に62基ある原発(もんじゅ含む)のうち、稼働しているものは関西電力の大飯3号機、四国電力の伊方3号機、九州電力の川内1・2号機のわずかに4基で、老朽化した火力発電所が原発停止により不足する電力を補っているという厳しい状況が続いています。

■私たちにできる節電

電力需給が厳しくなるのは夕方です。夕方になると太陽光発電による供給量が少なくなり、その一方で厳しい暑さでエアコンを使い続ける状況は続きます。このため午後4時から4時30分の予備率は4.7%、午後4時30分から5時の予備率は3.7%に下がります。

資源エネルギー庁によりますと、夏に家庭で消費電力が多い家電の割合はエアコンがトップで34.2%、ついで冷蔵庫が17.8%、照明が9.6%となっていて、この3つで全体の6割を占めています。これらの使い方の工夫が大きなポイントだとしています。

【エアコン】

部屋のドアや窓の開閉を少なくすること、窓のカーテンは閉め、扇風機を併用すること、室外機の周りに物を置かないことなどです。
冷房の設定温度を27度から28度に1度上げるだけで省エネになり、電気代も年間でおよそ820円の節約になるそうです。

【冷蔵庫】

麦茶やカレーなどの暖かいものは冷ましてから冷蔵庫に入れること、扉を開ける回数を少なくすること、冷蔵庫は壁から適切な距離を離して設置すること、設定温度が「強」の場合は「中」に切換えることなどです。

【照明】

点灯時間を短くすること、白熱電球の場合は蛍光灯やLEDのランプに取り替えることで省エネになります。

■さいごに

政府は8月を目途に電力会社などの節電プログラムに参加する家庭に、国が2000円相当のポイントを付与する制度を開始する予定だと発表しました。小手先の何とも情けない政策だと思います。世界的にも脱炭素の流れから、短期的には天然ガス火力発電へのシフト、さらに中長期的には再生可能エネルギーへシフトという流れです。

私も将来的に再生可能エネルギーを中心とする考えには大賛成です。しかし短期的にみると、資源の無い日本の場合、従来の原発再稼働や、格段に安全だと言われている小型原発などについても検討に含め、発電量を増やすためにどうしたら良いかという議論を専門家の皆様には積極的に行っていただきたいと、原発推進派では無い私でも思います。

家庭での節電意識が高い日本で、これ以上国民に無理な節電要請をしても電力不足が解消するとはとても思えないからです。私たちにできるのは、熱中症に気をつけて今回ご紹介したような節電対策を行うことだけです。次回は明るい話題を提供したいと思います。

それでは皆様、また来月お会いしましょう。

㈱建築工房わたなべ  代表取締役 渡邉泰敏