2024年07月:【「新紙幣発行」】

皆さんこんにちは渡邉です。梅雨入りして蒸し暑い日が続きタオルが手放せません。 

皆さんは本年73日から、新しい1万円札、5千円札、千円札発行されましたが、ご存知でしたか?新紙幣は既にご覧になりましたか?今月号のひげ日記はこの新紙幣についてのお話しです。

前回の新紙幣発行は20年前の2004年でした。日本の紙幣は約20年周期で更新されます。なぜ紙幣は定期的に更新され、紙幣に描かれる人物は誰がどのように決めているのでしょうか?その主な理由は「偽造抵抗力強化等」。つまり、偽造防止の強化策の一環というわけです。日本の偽造防止技術は世界一とされ、改刷ペースは自然と約20年ごとになっているのだそうです。

日本の紙幣は「日本銀行券」と呼ばれ、その名の通り中央銀行である日銀が発行しています。発行主体は政府ではなく、印刷も造幣局ではなく、独立行政法人の国立印刷局が担っています。今回の新紙幣は肖像がすべての券種で代わるだけでなく、表面の額面を示す最も大きな数字が漢字からアラビア数字に代わるなど、以前の紙幣と並べてみると大きく印象が変わっています。

■新札に描かれる人物とは?

新札に描かれる人物については、通貨行政を担当する財務省、発行元の日本銀行、製造元の国立印刷局の3者により協議を行い、最終的には日本銀行法に基づき財務大臣が以下のような方針で選定します。

1.日本国民が世界に誇れる人物で、教科書に載っているなど、一般によく知られていること。

2.偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できる人物であること。

現在まで17人が紙幣に登場しており、そのうち女性は明治時代の神宮皇后と樋口一葉そして津田梅子の3人です。

・新1万円札の渋沢栄一

生涯に約500もの企業の設立等に関わったといわれ、実業界で活躍しました。お札の肖像は、70歳古希のお祝い時に撮影された写真等複数枚を参考として描かれましたが、各方面で活躍した躍動感や若々しさを表現するため、60歳代前半をイメージして描かれました。

・新5千円札の津田梅子

日本で最初の女子留学生の一人で、女子英学塾(現・津田塾大学)を創設するなど、近代的な女子高等教育に尽力しました。お札の肖像は、女子英学塾を創設した年齢であり、津田梅子の教育者としてのキャリアが確立した年代である30歳代の写真複数枚を参考として描かれました。

・新千円札の北里柴三郎

破傷風血清療法を確立し、ペスト菌を発見。私立伝染病研究所、私立北里研究所を創設しました。お札の肖像は、風格や品位があり学者としての地位が確立し、働き盛りで充実した様子が伺えるため、50歳代の写真等複数枚を参考として描かれました。

 ■まさにアートなものづくり

・匠の技が光る、緻密な肖像

 肖像は、工芸官という専門職員が手彫りで彫刻しています。その画線は、1ミリの幅に10本以上の線を彫れるほどの緻密さ。考え抜かれた画線で陰影や質感をいかに表現するかが工芸官の腕の見せどころです。

・和紙の伝統を受け継ぐ

伝統的な和紙の技術「すき入れ」がベースである「白黒すかし」

この技術は、明治12年以来受け継がれ、そのシャープさ、繊細な陰影表現で世界的にも高い評価がされています。

・西洋の技術を、和の独自技術に

西洋技術者によって伝えられた彫刻技術は、現在も独自に進化しています。肖像の彫刻では工芸官がまずコンテ画を制作。それをもとに立体感を表現しています。

・伝統とデジタル技術が融合

コンピュータで作製された彩紋模様は、最終的に伝統的な彫刻技術と融合し、お札が完成します。

 ■さいごに

今回は新紙幣発行の話でしたが、蚊帳の外に置かれているのが、利用が低迷している2,000円札です2,000円札は西暦2000年と同年開催の九州・沖縄サミット(首脳会議)を記念して、1999年に当時の小渕恵三首相が発案しました。表面には人物の肖像画ではなく、沖縄県を象徴する首里城の守礼門が印刷されました。裏面は源氏物語絵巻の一場面と紫式部です。

発行直後は違和感の有る新紙幣ですが、きっと直ぐに慣れるのでしょうね。実はこの原稿を書いているのは6月末なので、まだ新紙幣は発行されていません。新紙幣見てみたいので、74日あたりに銀行で出金予定です。新紙幣で出金されると嬉しいのですが、どうなるか楽しみにしています。それでは皆さん、また来月お会いしましょう!!

株式会社建築工房わたなべ   代表取締役  渡邉泰敏