2010年8月:【中長期ロードマップ】
本年3月、地球温暖化対策に係る中長期ロ-ドマップが発表されました。日本は2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する目標を掲げています。そのための道筋を示すものが今回発表されたロ-ドマップです。
この中には国内排出量取引制度や環境税の導入、エコカ-の導入促進、原子力発電所の増設、建築物への木材利用促進など多岐に渡る内容が含まれています。部門別の削減量目標も記されており、家庭部門は1990年比29~35%減と高く設定されています。家庭部門の排出量は1990年以降も増えており、2005年比では48~53%減とほぼ半減させなければならないという内容です。
今回のひげ日記ではこのロ-ドマップの内容やロ-ドマップ検討会の資料、さらに環境省の方よりこのロ-ドマップについて話を聞く機会がありましたのでその時の資料をもとに、住宅分野についての内容を取り上げさせていただきたいと思います。
2020年に90年比25%削減を実現するための住宅部門での主な対策は以下の通りです。(比較の数字は2005年時点です。)
住宅における高効率給湯器の普及
・ 電気ヒ-トポンプ給湯器(エコキュ-ト)を約33倍の最大1,640万台に(3世帯に1世帯)
・ 高効率給湯器(エコジョ-ズ)を126倍の最大2,520万台に(2世帯に1世帯)
・ 太陽熱温水器を3倍の最大1,000万台に(5世帯に1世帯)
太陽光発電
・最大2,440万kwに(約21倍の発電量)
住宅の環境性能(断熱水準等)
・ 新築の100%が次世代省エネ基準または改次世代基準(断熱性能だけでなく住宅の総合エネルギ-評価のできる基準を作成)を達成(2005年時点での次世代省エネ基準をみたしている住宅は30%程度)
・ 既存住宅の次世代省エネ基準または改次世代基準達成率を全住宅の30%程度に(2005年時点では約4%程度)
その他、照明や空調機の高効率化、家電製品や電気機器の効率改善、省エネナビ(現在のエネルギ-使用量を金額等で教えてくれる機器)による見える化で省エネ行動の誘発等が挙げられています。そして、エコハウスの導入支援として、税制、補助、エコポイント、再生可能エネルギ-の固定価格買い取り制度(環境省の方の話によると、補助対象をトップランナ-の住宅及び給湯器、再生可能エネルギ-も含めたパッケ-ジ化の方向で絞りこみ、CO2排出量削減効果の高い住宅を支援するようです)。
また2020年、25%削減の目標達成のためには新築住宅への対応だけでは温室効果ガスの削減量が足りず、年間50万戸のリフォ-ムが必要になるようです。さらに、中小工務店で省エネ住宅を建てた施主への経済的支援として優遇策の上乗せも盛り込まれています。
今後の住宅は高断熱・高気密は当たり前になり、更に家全体でのエネルギ-消費量の見える化にむけて確実に動き出しています。
昨年12月号の『ひげ日記』でも書かせていただいた通り、私は住宅の省エネ性能は個々の部品の性能の優劣で考えるのではなく、家全体で考えた時どのくらい省エネになるのかという事が大切であると皆さんにお伝えしてきました。
ですからこの家全体のエネルギ-消費量で考えるという方向は大賛成です。そして既存住宅の省エネ改修(エコリフォ-ム)もやっと動き出すことになると思います。建築の専門家でさえ静岡は暖かい土地柄なので高断熱・高気密の必要は無いなどと言う人もいます。
しかし高断熱・高気密の家はエネルギ-消費量が少ないだけでなく快適性も大幅に向上するという事を皆さんにも是非知って頂きたいと思います。この中長期ロ-ドマップについては環境省のホ-ムペ-ジに詳しい資料が掲載されていますので、興味のある方は是非ご覧下さい。
㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏