2016年9月:【熊本地震の被災地を訪れて】
みなさまこんにちは、渡邉です。
7月8日(金)~9日(土)に被災地熊本県の中でも被害が甚大だった益城町等を中心に視察してきました。新潟県中越沖地震、東日本大震災の際も被災地を訪れ、生の声を聞いてきましたが、今回は比較的新しいと思われる住宅の被害も大きくとても驚きました。今月号の「ひげ日記」では熊本地震の被災地を訪問して感じたことなどをみなさまにお伝えしたいと思います。
以下は「なぜ新耐震住宅は倒れたか 変わる家づくりの常識」(発行:日経BP社)の記事よりの抜粋です。2,400円(税別)とちょっと高めの金額ではありますが、写真やデータも多く詳しく解説してあります。住宅の耐震性能の考え方についてとても参考になると思いますので、ご購入をお勧めします。
・2010年に完成した熊本県益城町の住宅は、長期優良住宅の認定を取得するため、壁量を建築基準法の1.25倍とする住宅性能表示の耐震等級2で設計していたが、本震で倒壊した。益城町で見られた2000年基準(接合部の接合方法や耐力壁のバランスなどの規定が厳格化された2000年以降の告示が加わった新耐震基準)の住宅の被害で顕著だったのは、スジカイの破壊だ。
・1981年以降で2000年基準導入前に完成した新耐震基準の住宅の被害について工学院大学名誉教授の宮澤健二さんらが行った調査では、約100棟のうちの6~7割が倒壊や大破していた。
・日本建築学会は熊本県益城町で建物の全数調査を実施している。その調査のとりまとめに当たっている京都大学教授の五十田博さんに熊本地震で明らかになった課題について聞いた。2000年基準で建設したと思われる住宅の全壊と倒壊が発生した。全壊だけなら建築基準法の想定範囲内だが、倒壊が出たことは重く受け止めなければならない。
耐震性能をランク分けした2階建て木造住宅を想定し、益城町役場で観測された前震と本震の地震動を入力した時の変位を計算した。その結果、建築基準法の耐震性能では倒壊、耐震等級2で全壊、耐震等級3ではほぼ無被害になることが分かった。基準法をぎりぎり満たす程度の住宅では大きな被害になる恐れはあるが、等級2から等級3レベルの余裕のある設計をすれば、被害を軽減できることが見えてきた。
被災地視察後、熊本市で活動されているエコワークスさんと新産グループの方々より被害状況や現在の様子などを聞く事ができました。災害救助法による応急修理の実施要領、住宅再建の流れと支援策活用、総務省の被災者への生活支援、災害復旧支援制度、地震保険加入者へ向けての手続き、災害点検チェックシートなど沢山の資料を提供いただき現地の生の声をお聞きしました。
益城町で建設した耐震等級3の建物3棟すべてでほぼ被害が無く、ビス止めで施工した瓦屋根の家についても瓦被害は無かったというお話もお聞きしました。
弊社で設計・施工している住宅は全棟で基礎を含め許容応力度計算による耐震等級3を最低限としています。今回熊本に行って、決して耐震等級3は過剰な性能などではなく、東海地震が叫ばれる静岡県においては必要な性能なのだと改めて確認できました。
普段の生活ではなかなかメリットを感じる事のできない耐震性能に、これからもこだわっていきます。そして、被災地を訪れ教えていただいたことをこれからの家づくりに生かして行きたいと思います。
最後に、熊本の一日も早い復旧と復興を祈念しています。
それではまた来月お会いしましょう。
㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏