2010年11月:【LCCM住宅】

 11月2日、茨城県つくば市の(独)建築研究所に行ってきました。現在建築中のLCCMデモンストレ-ション住宅を見学するためです。
 LCCM住宅(ライフサイクルカ-ボンマイナス住宅)とは、住宅の建設、使用、そして取り壊しまでのサイクルの中で、できるだけ省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギ-の創出で、住宅建設時のCO2排出量も含め生涯でのCO2の収支をマイナスにする住宅のことです。

現在、国土交通省の研究開発事業として、昨年から3年計画で研究開発が進められています。LCCM住宅ではまず、自然エネルギー利用をしやすいプランとし、高断熱・高気密、高効率設備機器利用等も含め自立循環型住宅等の手法で、運用時のCO2排出量を抑制する住宅を設計します。そして環境負荷の少ない材料を用いて住宅を建てます。

その上でさらに、太陽光発電のような“創エネ”機器を設置して、住宅の建設時や改修時、廃棄時に発生するCO2の返済をするという考え方をします。

ここで大切なのは太陽光発電等による創エネルギ-が生活時のCO2排出量より多くならないと、いつまで経っても建設時等のCO2を返済できないという点です。さまざまな技術を駆使して省CO2に取り組んでいるこのデモンストレ-ション住宅の場合でも、5kw程度の太陽光発電設備しか載せないと、LCCMとなるのには100年以上かかる計算となってしまいます。

そうした訳で今回のデモンストレ-ション住宅の場合は、ほとんど屋根面一杯の8kwという大きな太陽光発電設備を載せる予定です。しかし、その場合でもLCCMとなるために必要な期間は40年位かかる計算です。

こうした数字をみると、太陽光発電だけでLCCMとするのには無理があるように思います。太陽光発電と併せて太陽熱やバイオマスエネルギ-(木材等のCO2発生量の少ない自然エネルギ-)等の利用検討、およびその評価方法の検討が必要だと感じました。

このLCCM住宅は、国の目指す住宅の方向性を示すものです。また、居住時のCO2排出量削減は、住まい手にとっても光熱費削減となりますので、今後の研究成果に期待し、注目していきたいと思います。


この日はデモンストレ-ション住宅見学のあと「LCCM住宅技術交流会」の第1回研究開発委員会が開かれ、私も全国の工務店代表として参加してきました。この会は住宅の生産や供給の実務者が集まり、LCCM住宅普及のための課題と方向性を整理し、LCCM住宅の普及に寄与することを目的に設立されました。

参加メンバ-は建築研究所、電力会社、ガス会社、大手ハウスメ-カー各社の研究開発者を中心に、そうそうたるメンバ-でした。工務店としての参加者は私ただ一人。多少の心細さはありますが、地域工務店の代表として、積極的に意見を出していきたいと思います。

この交流会は、2012年9月まで継続的に開催されます。今後は、この交流会やLCCM住宅等の最新情報も皆さんにお伝えさせて頂きます。国はLCCM住宅普及のためのインセンティブの付与やLCCM住宅に対する支援・誘導の具体化として、国土交通省による助成の枠組み(2010年8月スタ-ト)公的機関による認証システム(2010年度LCCO2評価ツ-ルの詳細版完成予定、2011年度からLCCM住宅認証開始予定)など既に積極的に動き始めています。

まだまだ聞きなれないこのLCCM住宅という言葉ですが、皆さんこの機会に是非覚えてください。

㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏