2015年4月:【省エネ基準適合義務化】

 こんにちは、渡邉です。

 皆様、元気にお過ごしですか?4月に入り富士市では桜も満開となり、気温も上がり過ごしやすい季節となりました。さて、今月号の『ひげ日記』では先日閣議決定された省エネ基準適合義務化について書かせていただきたいと思います。

■適合事務化、住宅は2020年から

 建築確認時に省エネ基準への適合を義務づける法案が3月24日に閣議決定されました。今国会で成立すれば2017年から施行される予定です。まずは大規模な建築物から省エネ基準の義務化を行い、2020年までに新築住宅についても適合を義務化する予定です。

■半数は基準不適合

そうした状況の中でもその省エネ基準に満たない新築住宅が未だにおおよそ半数あるという怖い現実があります。2020年の義務化を見据えて国土交通省では大工さんや現場監督等を対象とした『住宅省エネルギー施工技術者講習会』が20万人の受講を目標に行われ、設計士などを対象とした『住宅省エネルギー技術設計者講習会』も開催されています。

 私は両講習会の講師も勤めているのですが、参加率もまだまだ低く、このままで義務化できるのか?ととても心配な状況です。さらに怖いのは、このままの状況で省エネ基準適合義務化をむかえた場合、建築確認上(机上)はそれなりの性能(数値)になったとしても、正しい理論や正しい施工方法を知らない者が施工すると、断熱材の性能が良くなった分だけ壁体内結露が起こる可能性が高くなるので将来大問題にならないか心配でなりません。

■たった5年で既存不適格建築物

現在住宅を建てるときに省エネ基準への適合義務化は必須ではありません。 つまり、単板ガラスのアルミサッシに薄い断熱材を入れただけの住宅でも合法的に建てる事ができてしまいます。

 今この省エネ基準をクリアしていない家を建ててしまうと、たった5年後の2020年には『既存不適格建築物』(法令の改正により基準に合わなくなった建物)となってしまい、増改築等の際には法律に適合させるために多くの費用を必要とする事になってしまうかもしれません。

 もし将来その家を中古住宅として売ろうとした場合、インスペクション(住宅診断)で施工不良や基準不適合の烙印を押されて建物の評価が大幅に下がった状況になってから気づいても遅いのです。2020年に予定されている住宅の省エネ基準への適合義務化のハードルは私に言わせればたいしたレベルでは無く、新築の場合はそのために掛かる費用はサッシの高性能化の差額と断熱材を厚くするための差額程度です。

■高断熱・高気密の効用

 断熱・気密性能の向上は暖冷房費に掛かる電気代が安くなるといった省エネルギーによる光熱費削減という直接的効用(EB:エナジー・ベネフィット)だけでなく、室内の温熱環境の改善につながるため、寒さに起因する疾病等を予防し居住者の健康を維持するという省エネルギー以外の効用(NEB:ノン・エナジー・ベネフィット)の為にも必須というのが常識になっています。

NEB(ノン・エナジー・ベネフィット)とは

例えば住宅を高断熱化することにより手足の冷え・肌のかゆみなどの健康面での改善効果や快適性の向上など省エネルギー以外の効用のこと。住宅の寒さが健康に与える悪影響については、すでに欧米では常識とされ、WHOの報告書でも取り上げられました。

断熱化が遅れていた日本でも、結露やヒートショックなどによる健康への悪影響が広く知られるようになり、快適な居住環境で健康な暮らしをめざす「健康維持増進住宅」の研究も進んでいます。

■さいごに

住宅の新築をお考えの方にはこの省エネ基準へ適合させておく事を強くお勧めします。可能なら弊社で標準的に行っている長期優良住宅の認定の取得も行えば第三者による証明になるばかりでなく、各種減税の対象にもなります。弊社では既に10年以上前から行っている高断熱・高気密住宅。壁体内結露を起こさず、健康で快適な住宅を建てるためには、正しい知識で正しい施工を行う事が必須です。それでは皆様、また来月お会いしましょう。

㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏