2017年7月:【断熱改修で健康リスクが低減】
みなさまこんにちは、渡邉です。
今回のひげ日記は、断熱と健康リスクに関するわかりやすい記事がありましたので皆様にご紹介させていただきたいと思います。 断熱リフォームによる省エネ以外の効果として注目されているのが居住者の健康状態にもたらす影響です。
(一社)日本サスティナブル建築協会は「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」の中間報告を行いました。断熱リフォームを予定する全国約1,800軒の住宅とその居住者約3,600人を対象に、改修前後における居住者の血圧や生活習慣、身体活動量といった健康への影響について調査検証を進めています。
■起床時の室温が低いほど血圧は高くなる
これまでに得られたデータに基づき検証を行ったところ、住宅の室内環境と血圧などの健康関連事象との関連が確認されました。具体的には、冬季の室温が10℃低い朝には平均で7.3mmHg血圧が高くなりました。冬季に起床時の室温が低いほど、居住者の血圧が高くなる傾向が見られたのです。
■高齢者ほど室温定価の影響が大きい
室温が10℃低下した際の血圧上昇量を見ると、50代までは6mmHgですが、60代では約9mmHg、70代では10mmHgを超え、80代では12mmHg以上も上昇しています。高齢者ほど室温の低下による血圧の上昇が大きいことが分かりました。また、動脈硬化が進んでいる人ほど室温の影響が大きい傾向も見られました。
特に高齢者の場合、室温が低くならないように注意する必要があります。自治医科大学 苅尾七臣主任教授によると、冬季の早朝高血圧が高齢者の循環器疾患を招きやすいそうです。
血圧・血流の変動や血管が痙攣する血管スパズム、喫煙といった慢性リスク因子に、急激な運動や精神的ストレス、寒冷といった急激リスク要因が加わると循環器疾患を発症します。早朝も急性リスク因子のひとつで、特に寒い冬の朝に発症リスクが高まるといいます。脳卒中や心臓突然死、急性心筋梗塞といった循環器疾患の発症時間は統計的にも朝が多いのです。
■断熱リフォームにより室温が上昇 居住者の血圧も低下する傾向のに
断熱リフォーム後には室温が平均2.7℃上昇しました。中には10℃以上上昇した住宅もありました。これに伴い居住者の血圧も平均で1.0mmHg低下しました。断熱リフォーム後の室温の上昇値が大きいほど、血圧の低下量も大きくなりました。
■居間・脱衣室の室温が低いと事故リスクが高い熱め入浴が増加
調査では入浴事故と室温の関連についても調べています。調査で得られた2,759人の有効サンプルを用い分析した結果、居間または脱衣所の平均室温が18℃未満の住宅では、42℃以上の熱めの入浴や、15分以上の長めの入浴をする人が多いことが分かりました。
消費者庁では安全な入浴方法の目安として「湯温41℃以下で10分未満に浴槽から上がる」ことを推奨しています。
■断熱リフォームが血圧以外の症状改善にも効果
アンケート調査などから、断熱リフォームによって血圧以外にもさまざまな症状の改善効果が見られたことが判明しています。「身体がだるい」や「頭痛」「鼻がつまる・鼻汁が出る」「風邪をひく」といったさまざま症状がリフォーム後に改善されたことが分かりました。
■無断熱住宅を省エネ基準水準にするだけで1.5㎜Hgの血圧低下に
無断熱住宅の断熱性能を現行の省エネ基準レベルにまで向上させることで、室温を4℃高めることができるとしています。室温が4℃上昇すれば1.5mmHgの血圧低下が期待できます。
断熱リフォームが血圧の低下をはじめ居住者の健康に寄与することが明らかになってきました。 ここまでの内容はLIXILメンバーズ通信2017年7月号「断熱改修で健康リスクが低減 注目される健康・省エネリフォーム」からの抜粋です。
■まとめ
住まいの高断熱化は光熱費削減だけでなく、居住者の健康にも良いであろうと考えられていましたが、最近はさまざまな調査結果でも明らかになってきました。住宅の新築をお考えの方はもちろん、リフォームをお考えの方も家全体でなくても断熱改修は可能です。
LDKや寝室、洗面脱衣、浴室などのゾーンを中心に断熱改修を考えてみてはいかがでしょか。
ちなみに、本年2月で「医師と考える健康な家づくり」というタイトルでひげ日記を書いています。よろしければそちらもご覧ください。
それではまた来月お会いしましょう。
㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏