2024年11月:【『高断熱住宅と健康の深い関係』】
みなさんこんにちは、渡邉です。
今年も残すところあと2か月弱です。11月に入り朝晩はかなり寒くなりました。
さて今月号のひげ日記は、「だん (新建新聞社発行)」18号の「高断熱住宅と健康の深い関係」より、住宅の断熱性能の大切さをみなさまにお伝えさせていただきます。
◆寒い家の健康リスク
日本では年間127万人が亡くなっていますが、うち47万人は冬に亡くなっています。冬の死因の多くが心筋梗塞と脳卒中と肺炎ですが、国内の都道府県別データでみると、寒冷地よりも温暖と言われる地域で死亡率が高いということがわかっています。
これはなぜなのか?断熱住宅普及率の統計とあわせてみると、断熱住宅普及率の高い寒冷地の都道府県では冬の死亡率が低いという相関関係がわかりました。つまり暖かい家が普及している地域は冬の死亡リスクが低く、室温が低い(家が寒い)と死亡リスクが上がるということです。
2018年にWHO(世界保健機関)は住宅と健康に関するガイドラインを発表し、冬季の室温は18℃以上であること、子どもや高齢者については更に温かい環境にすることを「強く勧告」しています。
◆血圧と住環境の関係
暖かいリビングから寒い廊下・脱衣室を経て熱いお風呂に入り、また寒い脱衣室・廊下を通ってリビングへ移動すると、急激な温度変化によって血圧が急変動し体調が悪化することが知られています。これは「温度差」が原因と思われがちですが、正確に言えば「低温」が原因なのです。温度と血圧の因果関係は30代からあらわれることがわかっています。
寒い家で特に問題となるのは早朝と夕方です。夜は暖かくしていても朝起きると冷え切った状態のため朝血管が急収縮して血圧が上昇する、夜になると血管が拡張して血圧が下がる、これを毎日繰り返すうえ、1部屋だけ暖かくしても他の部屋が寒いと、この往来だけでも1日に何度も血管の収縮拡張が繰り返されて血圧の急上昇・急低下が起こるわけです。これが長い間繰り返されると動脈硬化が進行します。
それはやがて心筋梗塞や脳卒中につながってしまいます。高血圧の人はお医者さんから生活習慣の指導はされても「家を暖かくしましょう」とは言われませんでした。しかし現在では高血圧を住宅の断熱化で改善できる可能性があるということが明らかになっています。30歳の男性の場合は朝20℃、80歳男性の場合には朝25℃まで暖かくしてようやく血圧が安定します。30歳女性の場合は22℃、80歳女性の場合は26℃くらいまで暖かくして、ようやく血圧が安定します。
男性より女性の方が温度低下によって血圧が上がるリスクが高いのです。基礎代謝量が女性の方が低めで発熱量が少ない分、より暖かくする必要があるのです。
高血圧で降圧剤を飲んでいる人は多いですが、降圧剤で下げられるのは5mm程度とされるため、住宅の断熱化によって室温を10℃上げて血圧の上昇を防ぐほうがはるかに合理的です。
高血圧以外の疾患では、心電図に異常所見がある人は室温が18℃以上の住宅に比べて12~18℃の住宅で1.8倍、12℃未満の住宅で2.2倍多く、また血中脂質の総コレステロール値が基準値を上回る人は、室温18℃以上の住宅に比べて12~18℃の住宅で1.8倍、12℃未満の住宅で1.9倍多いという結果も出ています。
これまで「生活習慣病」と広く認識されてきた高血圧や循環器疾患は、今後は住宅の温熱環境を含めた「生活環境病」であると認識されるでしょう。
家を建てるなら、断熱性能を高めること、家の中どこに行っても一定の温度になるような家を建てることが、自分自身の健康にもいいですし、子どもの健康も保てます。また、自身が高齢になった時に心筋梗塞や脳卒中・肺炎のリスクも減らし、脳年齢も若く保て要介護状態も何年か先延ばしできます。
◆さいごに
冬の健康リスクを軽減するためには、家の断熱性能を向上させることが一番の近道です。新築をお考えの方は是非、高気密・高断熱の家を、すでに住まいがある方の場合は断熱改修を行って、健康的な暮らしを手に入れて頂きたいと思います。
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各種補助金や家づくりに関する相談はお気に弊社までお問合せ下さい。
それではまた来月、お会いしましょう。
株式会社建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏